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暗証番号を忘れないための金庫との付き合い方
ダイヤル式やテンキー式の金庫の番号が分からなくなり、多大な時間と費用をかけて、専門業者に開錠してもらった。そんな苦い経験をした後、誰もが思うのは「二度と番号を忘れたりしないようにしよう」ということです。金庫のセキュリティを維持しつつ、万が一の際にも、確実に開錠できるようにするためには、暗証番号の管理方法を、根本から見直す必要があります。まず、最も重要なのは、番号を物理的な形で、かつ安全な場所に、記録しておくことです。頭の中だけで記憶しておくのは、最も危険な方法です。人間の記憶は、時と共に曖昧になり、緊急時には思い出せなくなることもあります。番号を書き留めたメモを、金庫本体に貼り付けたり、すぐ近くに置いたりするのは論外ですが、例えば、実印や銀行の通帳など、普段は金庫に仕舞っておくような貴重品とは別の、安全な場所に保管しておくのが良いでしょう。例えば、信頼できる家族だけが知っている本棚の特定のページに挟んでおく、あるいは、貸金庫に預けておくというのも一つの方法です。また、番号の控えを一つだけでなく、複数作成し、別の場所に保管しておく「バックアップ」の考え方も重要です。自宅の書斎と、実家の仏壇の中、というように物理的に離れた場所に保管しておけば、火災や盗難といった不測の事態にも対応できます。デジタルでの管理も有効な手段です。パスワード管理アプリなどを利用し、暗号化された状態で番号を記録しておけば、スマートフォンさえあればいつでも確認できます。ただし、その場合はスマートフォンのセキュリティ対策を万全にしておくことが大前提となります。そして、最も確実な方法が、信頼できる家族や、弁護士などの代理人と、番号を共有しておくことです。自分自身に何かあった場合でも、残された家族が金庫を開けられずに困るという事態を防ぐことができます。誰と、どの範囲まで情報を共有するのか、事前にルールを決めておくことが大切です。金庫は、大切なものを守るための道具です。しかし、その入り口である暗証番号の管理を怠れば、自分自身が締め出されてしまうという皮肉な結果を招きます。
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開錠された金庫のその後の運命
長い格闘の末、あるいはプロの力を借りて、ついに開かずの金庫の扉は開いた。中身を取り出し、長年の謎が解決した安堵感に浸るのも束の間、私たちの前には、もう一つの厄介な問題が横たわっています。それは、「開錠され、場合によっては破壊されて、もはや金庫としての機能を失った、この重い鉄の塊を、どう処分すれば良いのか」という問題です。金庫の処分は、粗大ゴミとして収集日に出す、というような簡単な話では決してありません。その理由は、金庫が持つ「重量」と「特殊な構造」にあります。家庭用の小型金庫でも数十キロ、業務用となれば数百キロから一トンを超えるものも珍しくありません。これほどの重量物を、個人で安全に運び出すことは極めて困難であり、無理に動かそうとすれば、床や壁を傷つけたり、腰を痛めたりと、二次的な被害を生む可能性があります。また、金庫は単なる鉄の塊ではありません。防盗・耐火性能を高めるために、鋼鉄のボディの内部には、コンクリートや気泡コンクリート、あるいは特殊な耐火材が充填されています。これらの複合素材でできているため、多くの自治体では「処理困難物」として、通常の粗大ゴミ収集の対象外としています。では、どうすれば良いのでしょうか。主な処分方法としては、いくつかの選択肢があります。まず、金庫の開錠を依頼した鍵屋や、金庫専門の販売店に、引き取りを依頼することです。多くの業者は、開錠から処分までを一括して請け負うサービスを提供しており、専門の機材とノウハウで、安全かつ確実に搬出・処分してくれます。もちろん費用はかかりますが、最も手間がなく安心な方法です。次に、「産業廃棄物処理業者」に直接依頼する方法もあります。金庫は産業廃棄物にあたるため、正規の許可を持つ業者に依頼すれば、適切に処理してもらえます。また、「不用品回収業者」に依頼するという手もありますが、中には無許可で営業し、不法投棄などを行う悪質な業者も存在するため、依頼する際には、必ず自治体の許可を得ているかなどを確認する必要があります。開けることばかりに気を取られがちですが、その「最後の出口」までを考えておくこと。それが、金庫との長い付き合いを、きちんと終わらせるための作法と言えるでしょう。