車の鍵を無くしてしまった時、特にそれがインテリジェントキーやスマートキーであった場合、そのショックと焦りは、家の鍵をなくした時の比ではありません。なぜなら、そこには「イモビライザー」という、高度な盗難防止システムの存在が大きく関わってくるからです。イモビライザーとは、正規のキーに埋め込まれた電子チップのIDコードと、車両側のコンピューターのIDが一致しない限り、エンジンが始動しない仕組みです。そのため、単に金属部分の形状を複製しただけでは、車を動かすことはできません。この特殊性ゆえに、車の鍵を全て無くしてしまった場合の対処法は、主に「自動車ディーラー」か「イモビライザーに対応できる専門の鍵屋」の二択に絞られます。どちらを選ぶべきか、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することが重要です。まず、自動車ディーラーに依頼する最大のメリットは、その確実性と安心感です。メーカーの正規代理店ですから、純正のキーを取り寄せ、専用の診断機を使って、車両のコンピューターに新しいキーの情報を正確に登録してくれます。品質は間違いなく、保証も万全です。しかし、デメリットもあります。費用は高額になる傾向があり、キー本体の部品代と登録作業の工賃を合わせて、数万円から、車種によっては十数万円に及ぶこともあります。また、キーの取り寄せに数日から一週間程度かかることや、車をディーラーまでレッカー移動させる必要があるのも難点です。一方、専門の鍵屋に依頼するメリットは、そのスピード感です。多くは出張サービスに対応しており、電話一本で現場まで駆けつけ、その場で新しいキーの作成からイモビライザーの登録までを、数時間のうちに完了させてくれます。費用も、ディーラーよりは安価に済むケースが多いです。ただし、業者によって技術力や料金体系に大きな差があるため、信頼できる業者を慎重に選ぶ必要があります。