鍵を無くしてしまった時、多くの人が抱くのは「不便だ」「家に入れない」といった、当面の困りごとに対する不安です。しかし、本当に恐ろしいのは、その先にある「防犯上のリスク」です。あなたが無くしたその一本の鍵は、拾った人間の悪意次第で、あなたの最もプライベートな空間への扉を開ける「招待状」へと姿を変えてしまう可能性があるのです。もちろん、鍵を拾った全ての人が悪意を持っているわけではありません。親切に警察へ届けてくれる人もたくさんいるでしょう。しかし、その一方で、出来心から、あるいは計画的に、その鍵を利用しようと考える人間がいないとは、誰も断言できません。特に危険なのは、鍵と共に、あなたの住所を特定できるようなものを一緒に無くしてしまった場合です。例えば、免許証や保険証が入った財布とキーケースを一緒に紛失した場合、拾った人間は、何の苦労もなくあなたの自宅を知り、堂々と玄関から侵入することができてしまいます。また、キーホルダーに、名前や住所が分かるようなチャームを付けている場合も同様です。一見、何も個人情報がないように思えても、SNSの投稿など、他の情報と組み合わせることで、持ち主が特定されてしまうケースも考えられます。だからこそ、鍵を無くしてしまい、最終的に見つからなかった場合は、たとえスペアキーが手元にあったとしても、必ず錠前(シリンダー)ごと交換することが、最も確実で唯一の安全対策となるのです。数万円の交換費用は、確かに痛い出費です。しかし、それは、あなたの家族の安全と、二度と戻らないかもしれない心の平穏を守るための、必要不可欠な投資なのです。鍵を無くしたという事実は、あなたの家のセキュリティレベルが、一時的に「ゼロ」になったということを意味します。その現実から目を背けず、最悪の事態を想定して、断固たる措置を講じる勇気が、あなたには求められているのです。