徘徊防止のための対策グッズは、手軽で有効ですが、ご本人の症状が進行し、それだけでは防ぎきれなくなってきた場合には、より根本的な解決策として、玄関ドアの「鍵(錠前)そのものを交換する」という選択肢が、非常に有効となります。最新の錠前には、徘徊防止という特殊な目的に、効果を発揮する、様々な工夫が凝らされているのです。まず、検討したいのが、「サムターンが取り外せるタイプ」の錠前です。これは、普段は、室内側の鍵のつまみ(サムターン)を、物理的に取り外して、家族が管理しておくことができる、というものです。これにより、外から回そうにも、回すべき「つまみ」が存在しないという、絶対的な防御壁を築くことができます。介護者や家族が在宅している時だけサムターンを差し込んでおく、といった、柔軟な使い方が可能です。既存の錠前を、このサムターン脱着式に交換するだけで、セキュリティは飛躍的に向上します。次に、非常に有効なのが、電子錠やスマートロックに搭載されている「ダブルロック機能(または、おやすみモード)」です。これは、通常の施錠に加えて、室内側のボタンを長押しするなどの、特殊な操作をしないと、内側から、たとえサムターンを回しても、解錠できなくなる機能です。この機能を使えば、夜間など、特に徘徊のリスクが高い時間帯だけ、玄関ドアを、より強固にロックすることができます。外側からは、暗証番号や、スマートフォン、通常の鍵などで、問題なく開けられるため、ヘルパーさんなどの出入りを、妨げることもありません。さらに、より本格的な対策として、室内側には鍵穴もサムターンもなく、外側からしか施錠・解錠できない「片側シリンダー」の補助錠を、高い位置に追加で設置するという方法もあります。これは、徘徊防止に特化した、非常に強力な対策です。鍵の交換は、単なる防犯対策ではありません。それは、徘徊という、深刻なリスクから、大切な家族の命を守るための、具体的で、かつ、極めて効果的な、愛情表現の一つなのです。