「鍵をなくして焦っていたら、ネットで見つけた業者に十万円も請求された」。そんな悲痛な叫びが、後を絶ちません。なぜ、このような高額請求トラブルが発生してしまうのでしょうか。実際に被害に遭った人たちの失敗談から、悪徳業者が用いる典型的な手口を学ぶことで、同じ轍を踏まないための対策を講じることができます。最も多い手口の一つが、「激安広告でおびき寄せ、現場で法外な追加料金を請求する」パターンです。「鍵開け880円」という広告を見て依頼したら、現場で「これは特殊なディンプルキーなので、特殊作業費として五万円追加です」「深夜なので割増料金が三万円です」などと、次々に理由をつけて料金を吊り上げていきます。依頼者が断ろうとすると、「すでに出張しているので、キャンセル料が二万円かかります」と高圧的な態度で支払いを迫るのです。次に多いのが、「不要な鍵の破壊と交換を強要する」手口です。ピッキングで開けられるはずの鍵でも、「この鍵はピッキング不可能なので、壊すしかありません」と依頼者の不安を煽り、ドリルで鍵穴を破壊します。そして、鍵開けの作業費に加えて、新しい鍵の部品代と交換作業費として、さらに数万円を上乗せして請求するのです。これは、ピッキングの技術がない業者が、手っ取り早く利益を上げるために使う常套手段です。これらの手口に共通するのは、依頼者の「無知」と「焦り」につけ込んでいるという点です。対策は、まず「安すぎる広告を信じない」こと。そして、「電話で総額の概算を確認する」こと。さらに、「作業前に必ず確定見積もりをもらい、納得できなければ毅然と断る」こと。この三原則を徹底するだけでも、被害に遭うリスクは大幅に減らせます。もし、万が一トラブルに巻き込まれてしまった場合は、その場で支払わずに警察に相談したり、後日、国民生活センターや消費生活センターに相談したりすることも重要です。他人の失敗は、明日の我が身を守るための、何よりの教訓となるのです。