鍵を紛失した際のパニックは、正常な判断力を奪います。しかし、その一瞬の隙が悪質な業者に付け込まれる最大の原因となります。玄関前で立ち往生し、一刻も早く家に入りたいという切実な思いを抱えながらも、最悪の事態を避けるための「業者選びのコツ」をいくつか知っておくだけで、結果は大きく変わります。まず最も大切なのは、電話をかける前の準備です。焦る気持ちを抑えて、少なくとも三社には電話をかけ、見積もりを比較してください。「今すぐ来てほしい」という一社目の誘惑は強いですが、比較対象がない状態では、提示された金額が高いのか妥当なのかを判断することができません。電話口では必ず、「出張費、技術料、部品代、夜間料金、これらすべてを含めて、私の状況で最大いくらになりますか」という聞き方をしてください。この「最大」という言葉が重要です。多くの悪質業者は、追加料金という名目で後から金額を吊り上げようとしますが、事前に最大額を約束させることで、その逃げ道を塞ぐことができます。もし、電話で概算すら言えないという業者がいれば、その時点で候補から外すべきです。次に、業者が到着した時の対応です。良い業者は、作業に入る前に必ず、身分証の提示とともに「本日の作業内容と確定料金」を書面、あるいは電子画面で提示し、こちらの署名を求めます。このプロセスを飛ばして、いきなりカバンから工具を取り出してドアに向かうような業者は、作業が終わった後に「思ったより大変だった」と言って金額を上乗せする典型的なパターンです。また、支払い方法についても事前に確認しておくべきです。現金のみしか受け付けず、さらに領収書の発行を渋るような業者は、後で連絡が取れなくなる可能性が高いと考えられます。クレジットカード払いに対応しているかどうかは、その業者がカード会社の審査を通っているという一定の社会的信頼の証でもあります。さらに、キャンセル料が発生するタイミングについても明確にしておきましょう。現場に来て、あまりに高い見積もりを出された時に「じゃあ結構です」と言える権利がこちらにはあります。その際に出張費として数千円支払うのは致し方ない場合もありますが、数万円ものキャンセル料を請求するのは不当な契約です。もし強引な請求をされたら、迷わず「消費者センターに電話します」と伝え、必要であればその場で一一〇番通報してください。警察は民事不介入が原則ですが、脅迫的な態度や居座りに対しては抑止力になります。自分の身を守れるのは、自分自身の冷静な対応だけです。玄関の前で途方に暮れる夜であっても、毅然とした態度を崩さないことが、悪質業者を退ける最強の武器となります。
玄関前で泣き寝入りしないための鍵開け業者選びのコツ