実家の片付けをしていた際、押し入れの奥から古びた家庭用金庫が出てきました。重厚な佇まいをしたその金庫は、長年家族の歴史を見守ってきた証のように、少しだけ表面の塗装が剥げていました。幸いにも鍵は一本だけ見つかりましたが、もしこれを紛失してしまったら二度と開けることができないという不安に駆られ、私はその足で近所にある大型のホームセンターへと向かいました。日曜日の昼下がり、店内は家族連れで賑わっていましたが、私の目的は一階の隅にある小さな合鍵作製コーナーでした。少し緊張しながら、油の匂いが漂うカウンターで年配の店員さんに古い金庫の鍵を差し出しました。店員さんは眼鏡をずらし、手元のルーペで鍵の形状をじっくりと観察しました。そして、壁一面に並んだ数えきれないほどのブランクキーの中から、私の鍵に合うものを探し始めました。店員さんによれば、この金庫は三十年以上前のもので、今ではこの形状の土台自体が非常に珍しくなっているとのことでした。幸いにも、店の奥の引き出しに眠っていた一本のブランクキーが適合し、作業を引き受けてもらえることになりました。削り出しの機械が回り始めると、火花とともに小気味よい金属音が店内に響きました。私はその様子を眺めながら、この鍵がかつて祖父の手で何度も回された光景を想像していました。大切な通帳や土地の権利書、あるいは家族への手紙が入っているのかもしれない。一本の鍵が持つ責任の重さを、削り出される金属の粉を見ながら実感しました。わずか十分ほどで作業は終わり、私は新しく作られた輝く鍵を手に取りました。店員さんからは、古い金庫は内部が乾燥して動きが悪くなっていることが多いので、無理に回さないようにというアドバイスをもらいました。帰宅して実際に金庫の鍵穴に差し込んでみると、驚くほど滑らかにカチリと音がして、扉が開きました。中には祖父が大切にしていた古い写真と、私たちが幼い頃に書いた手紙が仕舞われていました。ホームセンターという日常的な場所で、わずか数百円で手に入れた合鍵でしたが、それは単なる予備の部品ではなく、過去と現在を繋ぐ安心の架け橋のように感じられました。もしあの時、面倒がって合鍵を作らなければ、この思い出に触れることはもっと難しくなっていたでしょう。大切なものを守るための準備は、意外と身近な場所で、誰かの確かな技術によって支えられているのだと知った、忘れられない一日となりました。
祖父の遺品である金庫の合鍵をホームセンターへ作りに行った日の記録