以前、私が住んでいた都心のオートロックマンションで鍵を紛失した時の体験は、今でも苦い思い出として残っています。その日は友人の結婚式に出席し、少しお酒が入っていたせいか、帰りのタクシーのどこかで鍵を落としてしまったようでした。エントランスの前に立って初めて紛失に気づき、頭の中が真っ白になりました。とりあえずスマートフォンで一番上に表示された業者を呼びましたが、これが大きな失敗の始まりでした。やってきた作業員の方は、私の鍵が「最新の複雑なタイプ」であることを見て、解錠作業だけで四万円を提示してきました。断る選択肢もなくお願いしましたが、特殊な器具で無理やりこじ開けるような作業を見て、ドアの建付けが悪くならないかヒヤヒヤしたものです。さらに驚いたのは、その後のシリンダー交換の見積もりでした。そのマンションは、各住戸の鍵が一本一本、エントランスの基盤に登録されているタイプで、純正のシリンダーを取り寄せるのに六万円、登録設定費に二万円と言われたのです。結局、タクシーの不注意一回で、トータル十万円を超える大金を支払う羽目になりました。この時、もし事前に管理会社が提携しているサービスを知っていれば、これほどまでの高額にはならなかったはずです。また、後で知ったのですが、私が加入していたクレジットカードの付帯サービスにも「鍵の解錠無料」の項目がありました。パニック状態では、そうした身近な救済手段に全く気づくことができませんでした。オートロックマンションの鍵は、一戸建ての鍵とは重みが違います。それは自分一人のためだけではなく、建物に住む何十世帯もの安全を、システムの一部として分担しているという重みです。だからこそ、その管理責任を問われた時の費用は、想像を絶する額になります。この実体験を経て、私は二つの教訓を得ました。一つは、鍵という物理的な物を絶対に失くさない仕組みを作ること。私はそれ以来、鍵をカバンの内側にある頑丈なストラップに固定し、物理的に外れないようにしました。もう一つは、最悪の事態を想定した「金銭的な保険」を二重三重にかけておくことです。火災保険、クレジットカードの付帯サービス、管理会社の会員サービス。これらの連絡先を一箇所にまとめておくことが、いざという時の自分のパニックを鎮め、財布を守る唯一の手段だと確信しています。今、オートロックマンションで快適に暮らしている皆さんも、一度「もし今日鍵を失くしたら、どこに電話し、いくら払うことになるのか」を具体的にシミュレーションしてみることを強くお勧めします。その備えが、本当の意味での安心を形作るからです。